2011年8月20日土曜日

翼をください #3


冬が好きだ。
小雪は寒くなってくるとそう思うようになる。
吐く息が白いのが何故か素敵で、じんじんと痛む指先が愛しい。他にも、ミント色の手袋やストライプのマフラーを、タンスからひっぱり出す時なんて、顔がにやけてしまうほどだ。
だから、天使が降りてきそうな冬が好きだった。小雪はそう思っている。
無論、それらの理由もあるのだが、本当の理由は冬になるとなかなか布団から出てこない智之を起こしに行けるからなのだ。
夏だとこうはいかない。あいつは夏が大好きだから、いつだって先に学校へ行ってしまう。
小雪は今、ベッドの前にいる。
目の前にはモゾモゾと動く布団の固まり。枕側には髪の毛が見え、白いパイナップルみたいにふくらんでいる。起こしたことは起こしたのだが、なかなか布団の中から出てこないのだ。
んふふと小雪が笑った。
そして、手術前の医者みたいな面持ちで布団をひっつかんだ。にぃっと笑った口のまま息を吸う。
これこそ対布団篭城最終奥義。
「おっきろー!」
「うわああぁぁぁぁぁぁ!」
ガバッと布団を取り上げる。
中には寝巻き姿の智之が小さくなっていた。
「てんめえ……っ! 小雪ぃ! 寒いだろーが!」
「さっさと起きない方が悪いっ! 時計を見なさいよ。もう八時なのよ?」
毎朝持ち主さえ知らないうちに止められる目覚まし時計は、すでに七時五十八分を指していた。
指差された時計を見て、智之は動きを止める。
「……密かにやばくない?」
硬直もそのままに、寝巻きのまま汗をたらす。
少女はこめかみに青筋を浮かべながら言い放った。
「だと思うんなら、さっさとしなさい!」
ばこっと近くにあったティッシュ箱こそ、未だに寝ぼけ眼の智之の目覚ましになった。
「だーから言ったじゃない!」
「うるせー! 俺だってこうなりたくてこうなったわけじゃない!」
白い街を走る影二つ。……言うまでも無く小雪と智之である。結局間に合いそうもないのでこうやって走る事になってしまったのだ。
しかし……ホームルームは八時半から。どう考えても間に合わない。準備だかトイレとかで十五分たっている上、ここは商店街だから……走っても二十分はかかる。
「おいこら小みに」
「なによ!?」
「なぁに笑ってんだ、気色悪い」
「うっさい!」
こっちの気持ちも知らないで!
そのうち足が悲鳴を上げ始めた。智之はともかく、小雪は朝から走って大丈夫なほど体力はないのだ。
「……っふ……っふ……」
「はぁはぁ……はぁ……もう駄目……」
「走れ小みに!」
「みにって言うな!」
しかし二人も若いとはいえ疲れは来る。最初に小雪が、そしてもうしばらくしてから智之が。疾走から競歩……競歩から散歩に変わるまでそう時間はかからなかった。
そのうちゆっくりと歩いていくようになる。息が整い、二人に風景を見る余裕が生まれた。
「…………」
ふと、智之がこちらを見ていることに気付いた。
「なによ」
「お前未だに天使なんか好きなのかー? ダッセ」
彼は小雪の鞄についた天使のキーホルダーを見ていたのだ。
「うっさいわよ。アンタなんかに天使の素晴らしさなんて、分かるもんですか」
「あーあー分かんねえな。第一、天使って神様のパシリだろー? 余計ダサいじゃん」
「うっさい!」
小雪の反応に智之はフフンと鼻で笑いながら、続けた。
「知ってるか? 人間に翼があっても、そのための筋肉がないから飛べやしないらしいぜ? ましてや天使だなんてな。非科学的もいいとこだぜ」
かっかっか、と笑う智之。しかし小雪はため息をつき、軽蔑した目で智之を見た。
「……あんだよ?」
「ふん。ガキよねー智之は」
「はぁ?」
「翼のすばらしさを分からないようじゃ、まだまだだって言ってんのよ」
「わかるわきゃねーだろが。飛べなきゃしょーがねーだろ?」
「飛べるのも飛べないのも関係ないのよ。私は、飛べなくても翼が欲しいの!」
「……そんなに欲しいか? 翼」
「うん……大切なものを包み込めたらって、いつも思う」
「しょーじょ趣味」
「うっさい!」
二人はいつもどおり、笑いながら怒りながら歩いていく。
そろそろ商店街の店もシャッターを開け始める時間だ。顔見知りの店長が二人にあいさつをしてきた。
「なんだ、小雪ちゃんに智之くん、遅刻か?」
「そうなのよ、このバカユキがいつまでたっても起きないからさー」
「黙れ小みに!」
「なによー!」
「あははははは、まあ気をつけなさいな。たまにはいいかも知れないけどね?」
「そうかなぁ……?」
「いいっていいって。そのうち服も変えずに同伴登校って時も来るんでしょ?」
「……なにいってんのよ!」
「あははははははははは」
八百屋の店長は笑いながら店の奥へ去っていった。そうだった、私たちは遅刻してたんだ……。今更気付いたのだが、何故か悪気はない。罪悪感もない。少しだけどきどきがある。学校を遅刻しながら、霜の降りた商店街を歩いていくことがこんなに楽しいことだなんて想像さえしなかった。
「…………違うかな」
ぽつりと呟く。
「あ?」
「なんでもないわよ」
そう、今は言うべきではない。
まだ今は、この暖かい冬を味わっていたかった。
なんとか学校についた頃にはすでに1時間目が始まっていた。ぼけぼけコンビとして国語教師にも伝わっていたため、多少の冷やかしと訓告……というにも小さすぎる訓告で二人は授業に参加する事が出来た。
鞄から次々と教科書やノートを取り出す。その動作がなんと楽しいことだろう。朝、智之とゆっくり歩いただけでここまでなんでもないことが楽しいのだ。
右隣に座っていた茜が声をかけてきた。
「なに鼻歌なんか歌っちゃってんのよ」
「え? 歌ってた? 私?」
ぽそぽそと先生にばれない程度に会話が続く。
「もう思いっきり。智之くんと遅刻できたのがそんなにうれしかった?」
「…………ん」
「はっきり言いなさいよ。もうみんな知ってんのよ?」
「……そうだろうとは思ってたけどさ。茜でしょ? しゃべったの」
「何を言いますか。可愛いユキちゃんを想ってる私がどうしてそんなことを?」
「友人の恋ほど面白いものはないって今月のリズムに書いてあった」
リズムとは彼女が愛読している少女漫画雑誌だ。
「マンガを受け売りにするのはどうかと思うわ」
「うるさいわね」
「それで? コクった?」
一気に顔が赤くなる。冷たい教室内で、彼女の顔面だけが夏になった。
「……そっかぁ。まだかぁ」
「ああああ茜には関係ないでしょっ?」
「あんたがさっさとコクんないと他の子に持ってかれちゃうわよー?」
ドキ。
「なにをバカな。そんな物好きいないでしょ?」
「何を言うか物好きめ」
一瞬、心臓がはねたが、なるほど、ただの冗談か。
「冗談はほどほどにしてよね。全く」
さて、授業授業、と前を見た小雪に、追ってくる言葉。
「冗談じゃないわよ」
ズキリ。
今までとは違う、冷えた動悸。お腹の底から響いてくる氷の予感。
「智之くんね。最近誰か知れないけど好きなんだってさ」
「そんな――!!」
がたんっ!
教師の動きが止まった。ついでに言えば教室中の生徒の動きも。
夏目漱石を論じていた教諭は自分の肩を揉みながら口を開く。
「あー……小田原」
「……はい……」
「うん、別に遅刻とかはいい。誰にでも間違いはある」
「……」
「でもいきなりそんなーとか言われたら……なあ?」
「あの……すみません……」
「ん」
そう言って丸めた教科書で後ろの黒板を指す。
「立ってろ」
クラス中の笑い声に包まれながら、彼女は後ろの小型黒板のもとへ歩く。
教師は笑いを収め、授業が再開したが彼女は一つの言葉に縛られていた。
――智之くんね。最近誰か知れないけど好きなんだってさ。
立ち尽くしながら小雪はじっと教室の右端に座る智之を見つめ……もとい、睨み続けていた。
好きな、子。私以外を智之は好いている。
それだけが彼女の頭を支配し、埋め尽くし、立ち尽くさせていた。好きな娘の中に自分が入ることなど、いつもの彼を見ていれば分かることだ。ありえない。
誰だろうか。このクラスの女子は、総じてなんとも可愛い子ばかりだ。
  智之の趣味は知ってる。尽くしてくれそうなのは……やはり聖子ちゃんだろうか。いや、家庭科で満点をとった裕子かもしれない。そういえば由香だって裁縫が得意だ。今日子もそうだ。可愛いだけなら里美もそうだし、景子だって、奈菜だって可愛い。
  綺麗な子だって居る。遥はモデルみたいに綺麗だし、夏祭りの明美にはびっくりした。和服美人なら友香と奈緒美だってそうだ。
  いつの間にか、手が顔に触れていた。なんだか頬が冷たい。
だめだよ小雪。皆友達じゃない。このクラスの子はいい子ばっかりだし……。
働いた理性。しかし、すぐに別の言葉が浮かぶ。
でもいい子だから好きになったんじゃない?
ハッとする。もうすでに頭の中が嫉妬モードにシフトチェンジされていた。このクラスの女の子全員を敵に回しかねない勢いだ。
智之の好きな子。
寒い。寒くて、寂しくて、冷たくて、怖くて、悲しくて、悔しい。
授業が何を言っているか、彼女にはすでにどうでもいいことになりつつあった。この間の中間はまずい点をとってしまったから、期末でいい点を取らなくてはクリスマスを学校で過ごしかねない。今年のクリスマスこそ智之に……智之に……。
急に目頭が熱くなってきた。きっと今年も言えずに過ごすのだろうかと……いや、一緒に過ごすことすら出来ないのかもしれない……。
彼女はただ、俯いて涙を力ずくでこらえることしか出来なかった。

2011年8月12日金曜日

翼をください #2


「そりゃアンタが悪いわ、ユキちゃん」
放課後。
小雪は掃除をしながら友人の茜と先の事件について語り合っていた。
  茜は中学に入ってから出来た、小雪の友達だ。サバサバした性格からか、小雪からはとっつきにくいかと思っていたが、今では互いに親友と思っているほど、特別に仲のいい友達だ。
「なんでいっつも茜は智之の肩持つかなー。どう考えたってあれは智之が仕組んだ罠じゃない」
「私は公平に物を見てるだけ。教室間違えたのはどー考えてもアンタのせいよ」
クセの付いた箒を振るいながら茜は正論を放つ。
小雪は口を尖らせながら続けた。
「だって、あの時智之が話しかけてこなければ、私だって教室を確認したわ。うっとうしい事を言い続けて、私の目を瞑らせる事が目的だったのよ」
「どうかしら」
「なんでよー!」
ついつい叫んでしまう小雪。
しかし茜は冷静だ。……というより、こういう事態に慣れているようだ。
「良く考えなさい小雪」
「考えてるわ」
「もうちょっと冷静に。分析って奴をやってみなさい」
「う、……うん」
茜の言葉に少し腰を引く小雪。
「まず一つ。教室を間違えたのはなんで?」
段階を置いて事態を解決に結ぼうとする。小雪が苦手な分野だ。なんとか与えられた質問の回答を組み立てていく。
「私が目を瞑ってた……から」
「それはなんで?」
「智之の言う事に腹立てた……から」
「どうして腹を立てたのかしら?」
「智之が私を注意不足の間抜けだって……言うから」
「なんでそう言われたの?」
答えに詰まる小雪。
「……私が何回も智之に驚くから」
「どうして驚いてたのかしら」
「あいつが驚かすからよ」
多少無理矢理だが、なんとか智之を悪役にするために言葉を選ぶ。よし、と心の中でガッツポーズ。
「今日驚かされたのは何回?」
「……その時で五回目……」
「今までは? 昨日は? 覚えてる限りでどれくらい?」
ニヤニヤと笑う茜。いつもこいつはこの話になると急にイジワルになる。駄目だ。このままじゃあ駄目だ。こいつは今、楽しんでいる。
  ガッツポーズは消えて一気にアラートが鳴りたて始める。ワーニンワーニン。敵はもう目の前まで来ている。
だが、茜相手に嘘をついても仕方がないことを小雪は知っていた。
「……数え切れない……ぐらい……」
結局それが決定打となった。
「あんたの負け」
「なんでよー!」
振り出しに戻る。
「アンタの不注意よ。だいたいアンタ、智之くんに惚れてるんでしょ」
じとり、と少し意地悪な目でみる茜。
それを聞いた小雪は耳まで赤くして叫んだ。
「茜! 声おっきい!」
「そうなんでしょ?」
唯一、秘め事を打ち明けた人間は手厳しかった。小雪の秘密主義を無視して続ける。
「……うん」
ぽそり。
「じゃあかまってもらえて万々歳じゃない」
「ち、違うよ……」
「そんな訳ないわよ。うれしいって顔に書いてる」
「嘘よ! 絶対信じない!」
「まったく……アンタは何言っても納得しないんだから」
ため息をつく茜。
「そんなことないわ。私は真実を認める女なんだから」
「何よそれ……。じゃあアンタが間抜けだったって事、認めなさいな」
「なんでよー!」
再び小雪の叫びがこだまする。
「……ところで、本人はどこ行った?」
茜がふと思い出した様に誰にともなく聞いた。
  すると、たまたま隣でちり取りを持った男子がそれに応えた。
「確かごみ捨てに行ったハズ。そろそろ帰ってくるんじゃないか?」
「もう帰ってこなくていいの!」
小雪が怒鳴りながら掃除道具を収めたロッカーへと進んでいく。すでに皆片付けており、道具を持っているのは小雪だけだ。顔を真っ赤にしながら箒を戻しにロッカーを開ける。
がちゃり。
「よーっぽど俺の事が嫌いみたいだな」
「―――ッ」
その狭い空間に彼は居た。
「智之くん!?」
ざわめく教室。凍ったままの小雪。呆れ顔の茜。
結局これで6回目も成功した事になる。

2011年8月11日木曜日

インスタントラバー 06.おまけ


「あたしさー。同じゼミに居る華原ちゃんが好きなんよね」
「んん?  えーっと……?」
「ほら、いつもあたしの前に座ってるやん?」
「ああ、あの小さい子?」
「うん。可愛い。めっさ可愛い。でもエロい」
「エロ……い……かぁ」
「知らんのー? あの娘、いっつもふわふわした服着とるケド、めっさ胸あるで。多分Eはある」
「……マジで?」
「小そうてエロくて可愛いとか。女の子として最強やんか。あたしももっと背が低かったらなー……」
「あのさ、もしかしたらなんだけど」
「んー?」
「あのインスタントラバーって、最初にイメージを刷り込ませたのって、辻本?」
「……」
「っていうか、鏡見ながら、ちょっと修正入れた?」
「佐藤くん」
「なに?」
「オゴり、今夜ね」
「……分かったよ」

インスタントラバー 05.かえす


 今日も五月晴れの爽やかな日だった。
 大学キャンパスの三階にある、ゼミ用講義室。佐藤はそこのベランダで春の空を見上げていた。
 講義も終わり、何もすることがなくなってしまった佐藤は、灰皿をどけてコンクリートフェンスにもたれかかっている。
 メンソールの香りは漂っていない。これ以上、腹黒になることもないだろう。
 そうしていると、前と同じように一人の女子がベランダに出てきた。
 細い身体、三白眼、少し茶けた長い髪、小さな輪郭、ニヤけた笑顔、タバコが嫌い、アルトボイス、関西弁、左頬にある小さなホクロ。
 辻本が手を挙げた。 
「よっす、佐藤くん。試した?」
 三白眼がニヤリと細くなる。イタズラそうで、似合う笑い方。
 うん。間違いない。今度はちゃんと。
「感想言う前に、一個いいか?」
「んー?」
「……辻本」
 辻本の手を取り、佐藤は言った。
「好きだ」
 三白眼が、大きく開く。
 そして、再び細く笑う。
 今度はイタズラそうじゃない。うるおいを持った、でもとても似合う笑い方。
「……あたしも」
 辻本の手に力がこもった。
 佐藤もまた強く、しかし折れない程度に握り返す。
  ああそうだ。これが欲しかったんだ。
 あとは四つ目に気をつけないとな。
 
 おわり。

インスタントラバー 04.かたづける


 真っ暗な部屋の中、二人分の影のうち一人がのそりと起き上がった。
「……あー……」
 枯れた声。
 起き上がった影ーー佐藤はベッドから離れ、キッチンでコップに水を汲んだ。そう言えば、水もほとんど飲んでいなかったのを思い出した。喉が痛い。
  だというのにタバコのみの習性か、目がタバコを探した。少し離れたテーブルの上。そのすぐそばでデジタルの目覚まし時計が明滅して時間を教えてくれていた。
「……もう三時か。明日の講義は一限目からだったな」
 すでに明日ではなく今日になっているのだが。
 結局、その日は作った昼からずっと盛っぱなしだった。もう、下の人間が帰ってきたかなど考えもしなかった。食事も取らず、時折水だけ飲み、あとはただただひたすら触って動いた。
 突き動かされていた。
 気がつけばもうこんな時間。
  ぐぅぅ……。
  腹がなった。
「おー……。忘れてたな……」
  半分無意識な状態だったので今になった空腹に気づいたのだ。そう言えば昨日の晩から何も食べていない。
 インスタントラバーを見る。
 それはベッドの上で横たわっていた。何も変わらず、下半身を汚して、作った時と変わらない微笑を浮かべていた。
 さっきまでは〝行為〟にふさわしい、蒸気を帯びた顔をしていたのに。

 頬を染め、
 眉をひそめ、
 吐息をもらし、
 体位に合わせた動きをとって、
 彼を見つめていたのに。
 
 それは、空腹すら感じなかった。
 
「インスタント、だもんな」
 作った昼からおおよそ十五時間。
 正直に言えば興奮していた。こんなにいいものはないと思った。たぶん、愛していた。
 頭の中がそれしか考えられなかったし、初めての〝行為〟は思っていたよりもずっとずっと気持ちよかったし、声こそ無けれど相手が自分の動きに反応してくれるのが嬉しかった。
 なによりもそれが嬉しかったのだ。
 自分の全てを、受け入れてくれるようで。
  佐藤はベッドに腰掛け、コップを枕元の物置に起き、インスタントラバーのそばに寄り添った。まるで、恋人にそうするかのように、愛おしげに。
  インスタントラバーもまた、佐藤を見て微笑んだ。
  相変わらず、モナ・リザのような微笑み。

「違う……」

  佐藤は思わずつぶやいた。
  だが、インスタントラバーの笑顔は変わらなかった。
  当たり前だ。なぜならばこれは。

  なぜならばこれは。

「……」

  時計の音が聞こえる。
  冷蔵庫の響くような音。
  遠くを走るバイクのエンジン音。
  そして、胸の辺りが揺れるのを感じた。手の先がジンジンする。血が流れている。

  なぜならば。

  佐藤は語りかけた。
「いいのかよ、インスタントラバー」
 こうやって半日以上も突き動かされて、自分のメシを心配している今。
  メチャクチャにお前を使っておいて。今更。
  そう、今更になって気付いたんだ。
「俺はお前を、こんな踏み台みたいに使ってる……」
  インスタントラバーは答えない。
  ただ微笑みを浮かべるだけだった。
  まるで、彼を許すかの様に。
 モナ・リザのような、優しい笑顔。
 なんてこともない。
 こんな、こんな。こんなインスタントな恋人が。
 たとえ十五時間でも心の底から愛してると思えたこれが。
 やっぱり偽物だったなんて。
「分かってことなんだけどな……」
 頭を掻く。
「いや……分かってなかったんだ」
 唇に触れる。
「分かってなくて、分かったふりして、それで」
 顔を近づける。
「教えてもらったんだ」
 くちづけ。
「ありがとうな」
 インスタントラバーは微笑んでいた。
  モナ・リザのように。

   ――――――――――◇――――――――――

  佐藤は食事もタバコもやめ、バスルームに向かった。もうこれ以上、インスタントラバーに頼ることはやめようと思ったのだ。
  もうこれ以上、何もない事にふけるのは、意味がないと思ったのだ。
  バスルームに入ると、空のカップが足元に転がってきた。それを取り、ラベルにある処分方法を調べる。
 ④処分するには、首を締めてスイッチを押すこと。
「首……?」
  佐藤が眉をひそめる。
 ーー首にはインスタントラバーに関わる全ての情報が収録された、小さな機械があります。ここを壊すと、インスタントラバーは一瞬で水へと変換されます。あとに残るのはこの機械の破片ですので、この機械と当カップは各自治体の指示に従って処分して頂きますようお願いしますーー。
 カップにはそう書いてあった。
 佐藤は部屋に戻り、無言でインスタントラバーを観た。
 インスタントラバーは明後日を観ていた。いや、向いていた。
  カップを見直すと「二十四時間で液体に戻り始めるので注意してください」と書いてあった。作り始めてからおおよそ十五時間。あと九時間は人間のままをキープ出来るだろう。
 あと九時間、待っていれば。
「……」
  佐藤はテーブルに近寄り、タバコを取った。手の震えには、気付かないフリをした。
  しかし。
「あれ?」
  タバコは濡れて使い物にならなくなっていた。
  部屋を見返すと、どうやら水が入ったコップを倒してしまったらしい。タバコを置いてあった辺りが水浸しで、テーブルの下にはさっきまで飲んでいたコップをが転がっている。
「ビビってんのかよ、俺は……」
  自虐的に笑った所で、ふと気付いた。このコップはタバコの近くには置かなかったハズ。
  確かベッドの脇にーー。
  足元にコップが転がり当たる。
  佐藤はタバコを握りつぶし、部屋に戻ってくずかごに捨てた。
  そして、動かないままのインスタントラバーの上に馬乗りになる。
  ぎ、とベッドがなった。
「……サンキューな」
  インスタントラバーは微笑んでいた。
「バイバイ」
 佐藤の部屋から、キュウと言う音がした。

インスタントラバー 03. つかう

 ひとしきりインスタントラバーを眺めたあと、佐藤はベッドに持ち出すことにした。それなりにある重さから、いわゆるお姫様抱っこしかないだろう。誰にも見えてないとは言え、なんとなく恥ずかしいところだ。
「そもそも、女子ってのはお姫様抱っこしてもらいたいもんなのかな」
 などとつぶやきながら首と膝の裏に手をいれたところ、無表情のままインスタントラバーが身をよせてきた。両手を佐藤の首に回し、微力ながら力を込める。
「便利だなー。一体どうなってんだろ」
 力を込める。
「重ッ……!」
 四十五リットルの容量があるのだ。運動不足の大学生に、全く軽いという事はないだろう。
 なんとか持ち上げる。辻元の顔が、目の前にきた。
 無表情の顔が、こちらを見ている。
「ちょっとこえぇ……」
 そう呟くと、インスタントラバーが反応したのか、少し笑った。優しく微笑む、まるでモナ・リザみたいな笑い方。これも反応というやつだろう。
 バスタブから持ち上げ、バスルームを出る。乱雑なままの部屋を進み、ベッドにおろした。
 さきほどまで自分が寝ていたベッドに、今、あの辻元が裸で寝ている。一糸まとわぬ姿というやつだ。
「……リアルだな。辻本とはやっぱ少し違うケド、辻本にソックリだもん」
 少し。いや、だいぶ気恥ずかしい。
 一度インスタントラバーから離れ、再び冷蔵庫へ。残っていた最後の缶チューハイを取り出した。これが最後の一缶だ。
 ベッドの脇に立ち、缶を開け、飲みながらインスタントラバーを眺める。しわくちゃのシーツに乱れた毛布。その上に、裸の辻本。
 非日常、という感じがした。
 同じゼミで、背が高くて、関西弁のやたら目立つ女。それが辻本だった。
 特に何か関係があるわけでもない。何か思惑がある訳でもないだろう。そんな女を創りだして、何になるというのだろうか。しかも自分の欲望で。バレればセクハラでは済まされない。下手すれば千切られてしまう。出来てもいないのに。
 どうして俺は、辻本で作ったんだろう。
  欲しかったのか。
  会いたかったのか。
  抱きたかったのか。
  どれもこれも、なんだか分からない。曖昧だ。
 かと言って辻本以外で考えつく女も居ない。ゼミの女では辻本以外は覚えがないし、他に知り合いも居ない。バイト先も運送会社で男ばかり。唯一の女といえば、今年初孫が生まれる社長夫婦の奥さんぐらいだ。テレビもそう見ないからタレントも分からないし、雑誌のグラビアアイドルも、いまいち想像つかない。
 ……知ってる女と言えば、辻本だけだ。
 だとすればこれは裏切りじゃないだろうか。こんなマガイモノを作って、自分を満たすなんて、どうかしてる。
 でもそのきっかけを作ったのは……。
「考えすぎなの、か」
 かも知れない。 
 現実よりは少し大きめの胸に触ってみた。
 インスタントラバーの顔が、ピクリと歪む。
「そういう機能ってことなんだろうな……」
 ついこの間、バイト代をはたいて行った風俗のお姉ちゃんを思い出した。あの時よりは幾分か無愛想だ。あちらが大仰だったのかも知れない。
 わかってはいたが、佐藤は視線を自らに移した。案の定、年相応の反応を見せてくれて居る。
「なんでもいいのかな、俺」。
 とはいえこれはただのインスタントラバー。ダッチワイフだ。そういうために作られた人形。インスタントの恋人。カップ麺と同じ。
 
 即席の恋人。

 即席の愛情。

 即席の交尾。

「……ここまで来たんだ。もったいねえだろ」
 そう言ってから、残りを飲み干し、残っていたパンツを脱ぎ捨てベッドにに乗った。インスタントラバーに馬乗りになる形だ。二人分の体重を受け、ぎ、とベッドが音をたてる。
 自分が思っているよりも、少し可愛く、少し魅力的に、少しアベコベに出来たインスタントラバー。
 あの華奢で、触れたら折れそうで、でも折れそうにない辻本が、こんな風に出来たのは、どうしてだろう。
 これが、俺にとっての辻元なんだろうか。
 自分自身を見ればわかることだ。答えは出ている。こんなにもヤる気になっている自分が、そのままの答えだ。
 指で、唇に触れる。
 瑞々しかった。少し熱を帯び、桃色のグロスを塗ったような輝きがあった。
 インスタントラバーはと言えば、さきほどの笑顔を固定したまま、自動的に視線で佐藤の顔を追っている。
 そのままインスタントラバーに覆いかぶさるように重なり、そのまま頬と頬を重ねる。
 ひんやりとした感触。
 頬同士を合わせたまま、手を動かし、胸を触る。
「っ……」
 吐息を感じた。言葉こそ出ずとも、そういう機能はあるようだ。
 そう、機能が。
「これは、インスタントラバーだ」
 佐藤はそうつぶやいて、インスタントラバーの脚を思いきり持ち上げた。

   ――――――――――◇――――――――――

 動きながら、佐藤は色んな事を考えた。

 本物もこんな時、こんな表情するのかな、とか。

 もうすでに誰かに見せたのかな、とか。

 もしかしたら、今日、今、しているのかな、とか。

 どうして俺は辻本を知ってるんだろう、とか。

 他のゼミ生は知らないし、今でも興味がないのに、なぜ辻本だけ。

 気がつけば、目で追っていた。だって目立つから。

 気がつけば、耳をそばだてていた。だって関西弁だから。

 気がつけば、名前を覚えていた。だって母の旧姓と同じだから。

 気がつけば、話すようになっていた。だって時々会うから。

 気がつけば、そのシルエットを覚えていた。だって、目で追っていたから。

 気がつけば、冗談を言えるようになっていた。だって、関西弁で親しみやすかったから。

 気がつけば、彼女の裸を作っていた。だって、

 だって、

 だって、

 ……。

 どうしてこれをくれたのかな。

 意地悪だな。

 でも、やっぱ。

 きっと。

インスタントラバー 02.つくる


「なになに、作り方に手順があんのね。①最初にカップを持って、好きな相手のイメージを念じる。……こんなんで出来るの?」 
 次の日。午前十時過ぎ。
 佐藤は起きて、シャワーを浴びて、パンツ一丁の状態でカップを見ていた。
 先述のとおり、インスタントラバーの外見はまさしくカップラーメン。外側にラベルがぐるりと貼ってあり、そこには商品ロゴや取扱説明書、そして製造方法が書いてあるのだ。
 カップを持ち上げ、ぶつぶつと作り方をつぶやいていく。
「……んで、②四十五リットルのお湯を用意して、沸騰したら中の材料をそのまま入れる。(開けたままひっくり返してください)③浴槽の蓋を閉め、三分待てば出来上がり。と……。風呂でやれって書いてある。風呂でしか出来んわ」
 四十五といえば相当な容量だ。確かに浴槽でしか溜めることが出来ない数字だろう。
 頭をかき、カップを持ったまま気だるそうに立ち上がる。足元に転がっていた二リットルのペットボトルを拾い上げ、バストイレ一体型のユニットバスへ向かう。
 さきほどのシャワーの水滴が、未だにバスタブ内に残っていた。
「三分で出来れば、そりゃ確かにインスタントだよなぁ。前もそう思ったけどよ」
 独り言。
 念のため、バスタブにシャワーをかけて残った髪の毛を流した。一瞬だけ洗うかとも思ったが、やはりそれは一瞬で、ペットボトルの蓋を開けた。
 佐藤はバスタブのふちに腰掛け、ペットボトルに水を汲み始めた。一杯になった所でバスタブへ流し、空になればまた汲む。これを二十二回。最後の一リットルは目分量でいいだろう。
 水音が響く。このマンションは郊外にあるので、周囲には何もない。あるのは畑ばかり。おかげで静かに過ごせる。
 唯一心配していた真下の人間は、起きた時にたまたま下から出て行く音が聞こえた。
 オートロックなので郵便やセールスが中に入ってくる心配もない。
 ……これで、いくらベッドが軋む音がしても、怒られはしまい。
「ヤル気まんまんじゃねーの、俺」
 二回目の水を流し込む。ペットボトルを逆さにしながら自虐的に笑う。
  ……まだ不思議は、彼の心の中にあった。
 
 どうして俺は、これを使いたいんだろうか。
 
 そして、使いたくないんだろうか。
 
 どうしてくれたんだろうか。
 
 どうして辻本だったんだろうか。
 
 どうしてこれだったんだろうか。
 
 昨晩の不思議な感覚はむしろ大きくなったとすら言える。いくつかの不思議が、今は疑問となって彼の心中を圧迫していた。
 六回目の水を流し込んだ。
 
 どうして使いたいのか。
「それは単純に年相応の盛り、みたいなものだろう」

 どうして使いたくないのか。
「それは……」
 辻元の顔が浮かぶ。
 
「っていうかフツーさ」
 わざと声に出してみた。わかってる。ここは一人暮らしのバスルームだ。誰も聞いてないし、聞かれるのは少し嫌だ。傍からみれば不気味なのもわかってる。
「女の子がこういうのくれるのかって話だよな。逆セクハラだよな。これで抜けっつってんだもんな。訴えたら勝てるよなぁ?」
  そのクエスチョンマークは誰に向けてなのか。
 口は閉じなかった。
「男からもらうってのなら分かるよ。プレゼントっつって」
「不健全だけど」
「でも女子からもらうよりははるかに健全だよな」
「なんのプレイだよ。嫌がらせかっちゅーねん」
「あ、嫌がらせか。それあるかも」
「罰ゲームとかでさ。あの時、中で話してたのはそういう感じの内容で」
「女子会とか言ってたから、その時に話になったんじゃねーの?」
「うちのゼミで彼女居ないの俺だけだし、ターゲットにしやすいとかでさ」
「みんなで金出しあって買ってさ、超無駄使いーとかって酒入ったテンションでさ」
「駅の近くのハンズで売ってるだろこれ。あそこらへんなら飲み屋も多いし」
「そんで辻本がなんかのゲームで負けちゃったんだよ」
「それがあっての昨日、ちょうど俺が一人でタバコ吸ってて、ちょうど良かったとかなんだって」
「罰ゲームじゃん、やりなよー。あいつちょうど一人じゃん。あ、独りの間違いかアハハーみたいな感じで」
「あの後、きっと俺の見えない所で笑ってるに違いない」
「超キョドってるし受けるーとか言って」
「女子高生かっつーの」
「だってそうじゃなきゃ辻本が俺にこんなのくれるわけねぇもん。なんかのイタズラなんだよ」
 二十二回目の水が流れ込んだ。
「……きっと」
  
   ――――――――――◇――――――――――

 佐藤は一度部屋に戻り、本棚を漁った。不揃いの漫画本と、レジュメの間からビニール袋につつまれた厚紙を取り出す。
 厚紙の中には、ゼミの集合写真。
 ぶすっとしたままの佐藤と、そのすぐ左後ろで不敵に笑う辻本。ゼミの人数が少ないおかげで、それぞれの顔まではっきりと分かる写真だった。
 一瞬躊躇した。
「まさかね」
 などと言いながらも、写真を手にバスルームへ向かう。
 バスルームではよく熱くなった四十五リットルのお湯が待っていた。
 そしてその傍。蓋が閉まったトイレの上には、例のカップ麺。

 ーーカップを持って、好きな異性のイメージを念じてーー

 カップを持ち上げ、佐藤は少し固まった。
 今、俺は、何をしようとしている?
 誰の顔を見ている?
 誰の顔で、何をしようとしているんだ?
 喉がぐびりと鳴った。
「待て。待て待て。落ち着け俺。クールになるんだ。素数はわからん」
  混乱しているのだろうか。きっとそうだろう。
 今の今まで、まるで初体験の時のようにドキドキしながらもワクワクしていた。素直に言えば楽しかったのだ。新しいおもちゃを試すような気分だった。
  しかし、こうやって実際に引き返せない、決定的な〝想像〟をしてしまうと、まさに逃げ場がなくなってしまう。
 今までのように、一人ボケツッコミでかいくぐることが出来ない。
 佐藤は、カップを置いた。
 そしてそのまま力なく部屋に戻り、
 冷蔵庫を開け、
 昨日残した缶チューハイのうち一本を取り出し、

 一気に飲み干した。

「……ぶはっ!」
 がつん! と冷蔵庫の上に空き缶を叩き置く。酒に強い佐藤も、三五0ミリリットルの一気飲みはさすがに応えたのだろう。顔が真っ赤っかだ。
 まるで湯気でも出そうな顔色のまま、ダッシュでバスルームまで戻る。右手にカップを、左手に写真を持ち、堅く目を瞑り、考えられる限り全力で、頭の中を彼女でいっぱいにした。
 
 細い身体、三白眼、少し茶けた長い髪、小さな輪郭、ニヤけた笑顔、タバコが嫌い、アルトボイス、関西弁、左頬にある小さなホクロ……。
 
「……!」
 どれくらい念じただろうか。時間はともかく、力一杯念じたあと、おもむろに、まさしくおもむろにカップを包んでいたビニールを破り捨て、蓋を開け、中身を全てお湯にぶちまけた。カップ麺によくある小さな調味料などなく、中は全て粉。いや、一瞬何かが光ったので機械もあったのか? ええいめんどくさい気にするな。とにかく開けたそのままをひっくり返し、風呂の蓋をパタパタと閉め、無意識にスマートフォンのタイマーをセットした。ここだけはカップ麺と一緒だ。これで終わりだ。
「……はぁ……はぁ……はぁ……。あー……ははは……やっちまった……」
 風呂の蓋を閉め、そのまま床に座り込む。空になったカップがコロコロとユニットバスを転がって行った。

   ――――――――――◇――――――――――

 三分後。
 恐る恐る蓋を開けてみると、そこにはたっぷりとあったお湯が一切無くなり、代わりに裸の辻本が鎮座していた。
 今にも起き上がってしゃべり出しそうな辻本が、三角座りの状態で狭いバスタブに入っている。小さい顔、長い髪、スリムな体つき。まさしくもって辻本そのものだ。
「うおお……これは……」
 触れてみる。暖かい。むしろすこし熱かった。体から湯気がたっているトコを見ると、やはりお湯から作ったのだと分かる。
 顔も、身体も、まさしくそのまま辻本だった。もちろん、彼女の裸など見たことがないので、普段見ているスタイルをそのまま反映したものだが。
 そのせいだろうか、各所にズレのようなものがあった。
「なんつーか……胸がデカイ」
 すぐにそこに目が行くあたり、さすが盛りの二十歳である。
 だがズレはそこだけではなかった。
「胸もデカいし、背も低いし、ほくろも反対だ。イメージ間違ったのかな……」
 もしくは、イメージの中に願望を混ぜてしまったか。
 床に転がったままのカップを取り、説明書きを読み直す。
 そこには、イメージ通りに出来ない事がありますと書いてあった。
「やっぱインスタントだもんな」
 頬をつついてみる。
 無表情のままだったが、すこし眉がゆがんだように見えた。〝行為〟に反応、というのはこういうことだろう。
 気がつけば、インスタントラバーは佐藤の顔を見ていた。
 顔を動かしても目で追ってくる。ということは、そいう機能だということだろう。先ほど光った何かがそうさせているのだろうか。
「見つめ合う事が出来るわけだ。おしゃべりできねえな、こりゃ」
 そもそもそんな機能はないのだが。
 インスタントラバーの使用方法は、何もセックスだけではない。例えば失ってしまった人や、遠く離れて会えない人に、形だけでも会いたいという願いを叶える道具としても需要がある。むしろ販売元としてはそちらをメインに売り出しているのだ。
 反応する、という時点でこっち方面もまた見込んでいたのは間違いないだろうが。
 しかしなんにせよ、彼は作ってしまった。
 辻元の、インスタントラバーを。
 気づいて居るのか、居ないのか。佐藤は少しにやけていた。

インスタントラバー 01.もらう


 それは五月。五月晴れの爽やかな日だった。
 大学キャンパスの三階にある、ゼミ用講義室のベランダで男が一人、タバコをふかしていた。パーマがかかったオシャレっぽい、下北沢辺りに居そうな男だ。春の空を見上げ、ぽけっとした顔で半開きの口から煙をはいている。
  彼の名は佐藤。今年で大学二年生に上がった、いかにもな大学生。
 講義されていたゼミはすでに終わり、メンバーは各々自由に過ごしていた。教室で仲間や教授とダベっていたり、早々に出て行ったり、こうしてタバコを吸っていたり。
「なんで俺、これ吸ってんだっけ……」
 あまりのヒマさに思わずひとりごと。メンソールの爽快さが鼻から抜けていく。
 そもそも、どうしてこのタバコを選んだんだっけか。ああ、そうだ。好きなあのバンドが歌っていたんだった。なんとなく吸ってみようって選んで、ちょっと大人の気分になったら、あとは本当に習慣になってたんだ。俺の肺は三ヶ月分くらい黒いんだろうな。
「これぞ腹黒、なんつって……」
  紫煙が漂う。
 この大学に入学して一年と二ヶ月。講義をやり過ごすおおかたの部分を覚え、単位を落とさないように、それでいて苦痛のないようにモラトリアムを楽しむ方法を覚え、そして活用していた。
 故郷を出て、夢に見た都会での一人暮らし。今までにない開放感も手伝い、知り合った悪友たちとおよそ考えつく限りの遊びを彼はクリアしてきた。
 唯一仲間たちと違うと言えば、彼らは大学もサボリ気味だったが、佐藤はそうしなかった点だ。なぜならば彼の一人暮らしが決定した時、
 
『必ず四年で卒業しなさい。でなければ殺す』
『選んだ講義は必ず合格しなさい。でなければ殺す』
『必ず卒業までに就職しなさい。でなければ殺す』
『出来ちゃった結婚は許さない。万が一の場合は殺さない。ちぎり取る』

 ……という恐ろしい四か条を守らされたからだ。
 しかも両親は内容を明記した覚書を作り、そこに実の息子のサインと拇印を取ったのだ。これには例の白い営業もびっくりだ。
 だが、その契約は有効に動いた。
 適度に頑張れば四か条は守れているし、このまま行けば三つ目と四つ目もなんとかなる気がしている。……むしろ、四つ目に限っては破る方法を教えて欲しいくらいだった。
「佐藤くん」
 ふと、声がかかる。
 振り返ってみると、一人の女子がベランダに出てくる所だった。先ほどまで講義室の中で教授と話していたうちの一人だ。
 少し茶色かかった、腰まで届く長いストレートヘアに、三白眼と小さな輪郭。そして、食ってるのか怪しげな程のスマートな体つき。服装もまたそれを強調するかの様な、ピッタリとした黄色いティーシャツに、同じく脚のラインが浮き出るようなローライズパンツ。背も高いのでスキニーな格好が非常に似合う、カッコいいオンナだ。
 肩にかけた大きいトートバッグを揺らし、彼女は「よっす」と声をかけた。佐藤もまた「よっす」と返し、タバコをもみ消す。
「今ええ?」
 少し低めの声は、チャキチャキの関西弁を語った。
「あ、うん。なんだった? 辻本さん」
「あんな、おもろいモンをめっけたから、佐藤くんにやろおもて」
 そう言って辻本は、持っていたバッグからカップを取り出した。端から観れば、大盛りのカップ麺に見えてしまうだろう。
「昼飯?」
「なに? 腹減っとるん?」
「いや、だって、カップラーメンじゃないの?」
「あはは、間違ってもしゃあないわな。でもちゃうねん」
 そう言って、辻本はカップを差し出した。
 
「インスタントラバー」

  キョトンとした顔で、佐藤はカップを見た。確かに蓋には「Instant Lover」とロゴがある。
「これが、あの?」
「せや。佐藤くんも男の子なんやから知っとるやろ。ってか、うちより詳しいやろ」
「いやまぁ知っては居るケドさ……」
 インスタントラバーとは、その名の通り、お湯を入れて三分待てば恋人が出来るという画期的なダッチワイフのようなモノだ。用途は様々だが、そういう使い方が一番一般的だ。
 どういう技術か知らないが、作る前に念じる事で好きな相手を作る事が出来る。身長や体重、スリーサイズといった体つきや顔までもが思うままで、しかも〝行為〟に反応するというのだ。信じられない技術だというのに、値段としては一万円を切るという、非常に安価なアイテムなのだ。
「つこうたこと、ある?」
 佐藤は首を振った。
「田中ん家で見たことはあるけど、使ったりとかはないな」
 佐藤は使ったことこそ無いが、見たことは一度だけだがあった。友人宅でだ。
 有効日時が二十四時間しかないので使わせてはもらえなかった(というよりも使いたくなかった)のだが、その変態的技術に 佐藤は「日本はここまで進化したのか」と驚いたものだ。
「え、なに、田中くん、つこてんの?」
「あー……。黙っといてあげて」
「ええで。佐藤くんからってのは黙っとく。今度オゴってな」
 結局喋るのだろう。佐藤は心の中で友達に手を合わせた。
「で、これやねんけど」
 ずい、とカップを差し出す。
「要る?」
「んー……」
「何迷っとんねん。いいからもろとけって。はいパース」
 そう言って、辻本はぐいっとカップを押し付けた。
 反射的に受け取る佐藤。
「つこたら感想聞かせてんか」
「……っていうか、なんで俺にくれるんだよ」
「いやそれがさー。えー……」
「なんにせよ、普通女から男にこういうのあげるか?」
「まぁええやん。つこてよ。返さんでええからね」
 どうやって返せと言うのだ。
「明日の二限、フランス語やろ? 休みらしいで」
「え、マジで?」
「ほんまほんま。そしたら佐藤くん、明日まるっとオフになるやん? ええ機会やし、それで」
 と佐藤の手にあるカップを指差し、
「溜まったの発散させてまえ。タバコなんて辞めてもぉてさ」
「溜まってねえよ」
「ほんま? タイミング悪かった? ごめんな?」
「タバコのことだよ!」
「んふふ? ほんとはアッチなんちゃうん~?」
「女が下ネタとか、やめとけって」
「あらあら、あんたそんなんやったら女子会とかあかんよ。意外と古臭いなぁ」
 三白眼を細くして、ニヤリと笑う。イタズラそうで、彼女に似合う笑い方だ。
 ほんなら、ばいなら。と辻本はカップを残して行ってしまった。
 佐藤は残されたカップーーインスタントラバーを眺めて、ため息をつく。
「そりゃ……使ってみたかったけど、さ」
 無意識に、もう一本タバコに火をつけた。

   ――――――――――◇――――――――――

 午後十一時。
 佐藤は酒に酔いながら、もらったカップを自宅で見ていた。ゴチャゴチャとしたこたつテーブルの上に、大きなカップが鎮座している。
 カップの蓋はまだ、空いていない。
 飲みかけの缶チューハイをどけ、すでに吸い殻でいっぱいになった灰皿を引き寄せてから、タバコに火を付ける。
 あのあと、辻本としゃべることは無かった。彼女はどこかへ行ってしまい、佐藤も彼女とは別の講義にでなければならなかった。
 そして帰りのコンビニで三つほどの缶チューハイとタバコを買い、家に帰ってはカップを見ながら呑んでいるのだ。
 不思議だった。
 どうして辻本が……女の子がこんなものを持っているのかということ、どうして俺にくれたのかということ。
  そしてもう一つ。どうしてこうして悩んでいるのか、ということ。
「どっかなんかあんのかな……」
 どこに何があるというのだろうか。それもまた不思議の一つ。
 それだけがずっと心に残っていて、そしてだからこそ不思議だった。こうした大人のオモチャ的なアイテムを人からもらうなど、そうそう出来るものでもない。
 タバコを押し消し、すっくと立ち上がる。
「……今日は、やめとこ。そうしよう。うん」
 残っていた缶チューハイを飲み干し、ベッドに倒れこんだ。スプリングが悪くなっているのか、ギ、と大きな音が響く。これでは夜中に派手な動きは出来ない。
「昼間なら誰も居ないよな……」
 ここは学生が中心に借りている賃貸マンションだ。昼間はみな、学校に出払っている。
 ……休講でもない限りは。
 心に不思議と、そしてどこかに期待を持ちながら、眠りについた。

2011年8月8日月曜日

翼をください #1

 そこに居る。
彼女はそう思って、階段の途中で立ち止まった。三階から上がってすぐの場所だ。
そこはちょうど死角になっていて、はっきりと断言出来なかったが、なんというか。「匂い」がする。彼女はそういう「匂い」は結構信頼しても良いと分かっていた。
じゃあ、一体何の匂いなのか。
いつもいつも後ろからやってきては驚かし、ドアを開けては驚かし、箱を開ければ驚かしてくる。そういうやつがいる居る匂いだ。
彼女は思う。冗談じゃない、と。
こちとらもう飽き飽きなのだ。いつまでたっても、そんな子供じみた事は。奴とは幼稚園からの腐れ縁で、中学校に入学した今でもそれは続いていて、さらにはその匂いもずっと続いていて。……とっくの昔に飽きると思っていたが、甘かった。
彼の悪ふざけと軽口。中学二年の割には大人びた性格に、子供みたいな私とのやりとり。一体何がし「――小雪!」
「っっっっ!!!」
上から黒い何かが落ちてきた。びっくりして声も出せないまま、彼女は固まってしまう。
四階へと続く階段から落ちてきた――もとい、降りてきた黒い何かは、学生服を着た一人の男子。
つまり、彼こそが“彼”だということだ。
冬の昼。毎度毎度のやり取りが今日も飽きずに繰り返されてゆく。
彼女の名前は小田原小雪。十三歳。
クラスメイトや近所の交友関係は、老若男女かまわず名前で呼び合う程至って潤滑。本人に自覚は無いが可愛いと有名。しかしそれは恋愛対象としてではなく端から見て、である。公園で遊ぶ子供たちを見て可愛いと思う事と同じだ。いやそれを本気で可愛いと、“そういう意味”で可愛いと表現する方々も居るようだが、出来れば漫画などで発散して欲しいところだ。
身長は142センチジャスト。体重は企業秘密との事。
趣味は天使グッズ収集、好物はドリア、嫌いな物は虫。特にとんぼ。座右の銘は「いつでも笑みを」。夢は童話作家といういまどきめずらしい純情派。
家族構成は両親と彼女だけ。本人は妹が欲しいと思っては居るが、何故だか最近それを言うのが恥ずかしい。保健体育の時間も妙な気分になってしまう。それと何か関係があるのか無いのか。彼女にはまだ分かっていない。
なお、本人は隠しているつもりだが周りにはバレバレの青春白書の一ページを持っている。
つまり。
恋をしている。
「そんなに怒んなってばさー小雪ぃ」
窓もなく、外に晒された渡り廊下を二人が歩いていく。
彼はその中二にしては高い長身をかがめ、謝りながら140センチあたりに顔を持っていった。
彼女はそっぽを向いた。
「こぉゆきぃ~」
少し寂しそうな声。しかし彼女は別に怒ってそうしたわけではない。ただ、顔が熱くなっていくのを感じたからだ。この秘め事を知られては、またこいつに馬鹿にされてしまう。そう思い、ただただ冷静を保とうとする。
ほてりを気にしながら、小雪はずんずんと歩いて行く。
二人の手には教科書とアルトリコーダー。これから音楽室で音楽の授業だ。
「なーってばぁ」
と、彼はぽんぽんと小雪の頭を軽く叩く。
二人の身長差故に出来る、彼なりのコミュニケーションの取り方。それが彼女にとってどれだけ屈辱的な事か、彼は知らない。
彼はいつだって彼女より優位に立っているのだ。この屈辱的な行為は、本人にその気は無くとも一つの現れ方だと彼女は思っている。それはこいつの顔を見ると高鳴ってしまう自分が居る限りそうあり続けるだろう。
彼女の足が止まった。
それについていた彼の足も止まる。きょとんと、彼は小雪を見た。
顔の温度を確認。大丈夫、熱くない。
  そして彼の顔を睨み上げてから、彼女はその重たくしていた口を開く。
「智之」
「ん?」
「ウザい」
彼女は限界を感じて瞬時に前を向いて歩きだした。
「でもさぁ、毎度毎度ひっかかる小雪も悪いと思うんだよな」
小雪について行きながら智之は言った。
「そんなわけないでしょ」
「いいや、そうだね」
「どうしてそんな事が言えるの」
「どうしても何も、反応する方が悪いだろ」
「そんなわけ、無い」
「あるね」
彼女は歩みを止めずに反論を繰り返す。冷静に勤めていたはずだが……どうやらその陰は白い息となって消えていったようだ。
「そんなわけ無い! だって、脅かす方が悪いんだもん!」
進む足はそのままに、小雪が大きく声をあげた。
  だが智之は表情も変えず。
「普通はな」
と小雪を見下ろす。
「じゃあ智之が悪いじゃない! なんで私が悪いのよ!」
「だって今日、これで五回目だぞ」
「う……」
「給食が終わってからだと二回目だ。用心しないのもどうかな?」
「だからって――」
「ほぉーら、苦しくなってきた」
くけけけ、と智之は笑った。
「うぅうるさい! 黙って歩け!」
小雪は顔を真っ赤にして歩みを速める。
「小雪ー」
智之の声。
しかし彼女は無視し続ける。
「小雪ってばー」
「無視無視無視無視無視……」
目を閉じ、ぶつぶつと小雪はつぶやき始める。これで彼の声は聞こえない。大丈夫。教室の場所は目を瞑っていてもたどりつける。
ふふんだ。ザマミロ。もうアンタが驚かそうとしても無駄なのよーだ! もうすぐこの屈辱ともおさらば。授業中にまでちょっかいかける勇気なんて、あいつにはないんだから。いつだって休み時間とか放課後とか先生の居ない時にしか声かけられない臆病者なのよ。なんて言ったかしら……そう、チキンって奴よ! コケッコッコーよ!
  別に声に出してはいない。だが、心の中ででも文句を言ってやらないと、口から溢れてしまう所だ。
  そうこうしているうちに、彼女は目的地たる教室の前に付く。前の授業である体育の着替えに遅れ、今回の移動教室にもギリギリの到着となってしまった。大丈夫。まだチャイムは鳴っていない。
  カラカラ、とドアを開ける。たくさんの生徒と、早めに来てビーカーを手に実験の準備を始めている教師。
後ろから、智之の笑い声が聞こえた。まだなんか文句が……。
  あれ?
先生が持っているのは……なんだって?
「小雪……そこ、生物室」
智之が少し離れた所からニヤニヤと笑っている。
「――――」
小雪はただただ体をこわばらせ、胸の教材一式(「中学の音楽2年」とアルトリコーダー)を抱きしめ、爆笑の渦たる生物室に背を向けた。

[感想]映画「トランスフォーマー ダークサイドムーン」

記念すべきブログ一発目の投稿。先日見ておいてまだ感想を書いてなかった映画。「トランスフォーマー ダークサイドムーン」です。

金属生命体である「トランスフォーマー」達は、正義の集団「オートボット」と悪の集団「ディセプティコン」の二つに分かれ、惑星サイバトロンで戦争していた。だがその戦争はディセプティコンの勝利で幕を閉じ、オートボット達は地球へ避難してくる。だがディセプティコン達は逃げたオートボットを追い、この地球で再び戦火を起こした。それに対抗するのは、少年サムと彼の愛車カマロに化けたバンブルビー。そして、あらゆる車から変形するオートボット達だった。

ストーリー的には普通です。悪く言えば見る所無し。超王道。一度も首をひねることなく楽しめました。いや楽しめるというか、とってつけたようなストーリーなので、意味はあんまないかも。

問題はやっぱり映像。これに尽きる映画かと。
CGで出来たとは思えないぐらいリアルなトランスフォーマー達が、ガシャガシャと変形していく様は観ていて爽快。まるでパズルのように車から人間型へと形を変えていくのはロボファンでなくとも「すげー!」ってなると思います。
逆にロボファンから観れば「せっかく車の外装という装甲があるんだから、背中とかじゃなくてもっと大事な部分を守りなさいよ」という指摘があるかも。オプティマスの脛から見えるパイプやシャフトが、ミサイルで一気に潰されそうで不安でした。まぁ器用に避けてたケド。

ロボットのバトルシーンはミサイル・マシンガンといった飛び道具と、ヒートソード・ナックルといった格闘が半々でした。ロボ自体の大きさを強調するためか、ビル街での戦闘が毎回ありますが、そのせいかロボがアップになりやすい。そして画面いっぱいにロボが映るので、「何がどうなってるのかさっぱり分からない」こともしばしば。今見えてるのは胸? 腹? というのは何回かありました。

でもその巨大さからくる爽快なバトルシーンは、確かに息を飲みます。武器を取り出すシーンや、見栄を切るシーンはついつい拳をにぎっちゃいますし、金属がぶつかり合う鋭い音は臨場感を増してくれます。綿密なCGゆえの、装甲のサビや劣化部分も、バトルシーンのリアルさを強調してます。

個人的にはバンブルビーが可愛くて可愛くて。カマロ欲しい! とか思いました。あと、今回の映画ではCG書きなおしたのかな。オプティマスもバンブルビーも、なんだかスタイリッシュになってた。腰と脚がスマートに、上半身がちょっとだけマッシブな感じに。嫌いじゃないけど、アメリカ産ロボって感じがしなかった感も。

「頭空っぽにしてわかりやすく、それでいて爽快な映画が見たい」という方にはオススメです。
逆に「話にはそれなりに意味やテーマがないと」という方にはなんとも言えない感じでした。

2011年8月7日日曜日

はじめに。

 SNSサイトで自作小説をアップしていたんですが、そこで出来た友達が、自分のブログでもアップしているのを見て、じゃあ自分もやってみようかな、と思い作ってみました。
書くのは主に、コメディ、トリビアネタ、パロディというジャンルの創作小説。たぶん二次は書かないと思う。あとは、漫画、小説、映画などの感想を上げていこうかなーと考えてます。
でも自分が書いているハナシは中途半端に長い事が多いし、今までの書き方はSNSサイトで書く場合を中心に考えていたので、なんというか最初はあんまし上手くいかないかも。
どうなることやら。