2012年9月22日土曜日

写真小話 No.165


 
 そう言って、私の彼はにっこりと笑った。
 信じられない。だってそうでしょう? 人の顔、ましてや自分の彼女に出来るえくぼと、砂浜に出来るくぼみを一緒にするなんて。ありえない。
 私はちょっと頭に来た。このまま帰ってやろうかと思ったけど、ここまでは彼の車で来た事を思い出した。それ以外の方法ではどう考えても家まで帰れそうもない。
 じゃあせめて一発くらいお見舞いしてやろうかしら。もう一度彼の笑顔を見た時、それが出来ない事に気付いてしまった。
 彼の顔に、それは見事なえくぼが出来ていたのだから。

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